当社では、コンテナでは対応できないような多種多様な形状の貨物を組み合わせて、アジアや中東など各航路に定期的に在来船を配船しています。そして、どの航路でも配船の核となるのが主に日本から輸出されるコイルやパイプなどの鋼材です。鋼材グループはいわゆる社内の営業部隊で、メインの仕事は航路問わずこの核となる鋼材貨物を集荷することです。どのタイミングで、どんな形状の貨物を、どのような数量、どこからどこまで運んで欲しいというお客様からのご要望に対して、各貨物の組み合わせや採算を検討し、運賃と配船案を提案します。貨物を成約すると、配船担当者や運航担当者と密に連絡を取って実際の船積みまでアレンジしていきますが、在来船に積むようなスケールの大きい貨物はなかなか当初の予定通りに貨物が揃わなかったり、荷役が天候に左右される部分も多く、全ての配船が当初の予定通りに行くほうが珍しいくらいです。一つの貨物を船積みまで結び付けるだけでも、営業と配船担当、海技者がそれぞれの立場で機転を利かせ、擦り合わせと調整を重ねてやっと実現するものなので、営業部隊とは言っても実際にはグループの垣根を越えて常に各方面を巻き込みながら仕事をしているイメージです。当然荷役や積み付けの知識も必要になってきますし、社内外との調整力・交渉力が求められる仕事です。
【在来船】
コンテナに積載できない大きな貨物や重量物を積載する船。コンテナ船が登場する以前からあった船型という意味で在来船と呼ばれる。
私は上述したような定期航路に積む鋼材の営業も一部担当していますが、メインでやっているのは当社の例月船ではなく、より大きな船型を要する特殊なプロジェクト案件の営業と本船手配、及びオペレーションです。鋼材を扱うお客様とやりとりしていると、時には28,000DWT、52,000DWT規模の船を丸々何隻も使うような大型案件の輸送依頼が舞い込んでくることがあります。このような輸送サービスを専門用語でトランパーと言います。よく使われる例えですが、当社の定期在来船が乗り合いバスとすれば、トランパーの商売は貸し切りバスのようなイメージです。このような輸送依頼を受けた場合にはNYKグループ全体の船隊に視野を広げてお客様のご要望に適した船を手配する必要が出てきますので、グループを横断して関係者と打ち合わせを重ね、積み付けやコストを検討して配船案をお客様に提示します。貨物を成約した暁には船の手配からオペレーションまで自分でこなす体制となっていますので、商売の初めから終わりまで主体的に関わることができる面白い仕事だと思います。大型案件になると、最初に見積もりを出してから、紆余曲折を経て実際の配船に漕ぎ付けるまで2年近くかかることもあり、またグループを横断して船を手配しますので調整しなければならない事柄も増えますが、その分輸送を完遂したときの充実感は大きいです。商談や本船手配の最終段階などプレッシャーがかかる場面もあり、オペレーションでもタイムリーな判断を求められますが、先輩達のサポートもありますし楽しみながら日々仕事をしています。
【DWT】
Dead Weight Tonnage の略。船の大きさを表す単位
海運の仕事、特に在来船の仕事はマニュアルでは対応しきれない部分が多く、自ずと個人の裁量に掛かってくる部分も増えてきますし、実際私自身も年次の割には多岐に渡って業務を担当している実感があります。船長や世界中の代理店とのやりとりなど英語を使う機会も多いので、国際的に仕事がしたいと思っている方にはもってこいの仕事だと思いますが、それ以上に貿易の世界では様々な個性的で魅力的な人たちが活躍しており、社内社外問わずそのような人たちと一緒に何かを成し遂げるプロセスが個人的には刺激的です。皆さんも少しでも貿易の仕事、海運の仕事に興味があれば一度日之出郵船の門を叩いてみて下さい。